読谷文の本棚

読んで心に残った本の感想を綴ります。

『子宮』盛可以/河村昌子訳

河出書房新社
初版年月日 2022年10月26日

先日(2023年1月31日)締め切られた、第9回日本翻訳大賞の読者推薦に推薦しました。

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1960〜70年代に中国南部の農村に生まれた初家の五人姉妹を軸に、清朝生まれの纏足の祖母、両親、弟の妻とその娘まで、四世代を描いた傑作大河小説だ。タイトルの『子宮』が示す通り、女性の生殖が一貫したテーマとなっている。

姉妹とそれぞれのパートナーの人生の悲喜交々が、一定の距離感で淡々とした筆致で描かれており、とてもリアルだ。かりそめの愛から真実の愛まで、どのエピソードもしみじみと胸に突き刺さり、とりわけ四女初雪の話が苦しくて仕方なかった。

田舎特有の息苦しさ、かつ国家が生殖に介入することのおぞましさが余す所なく描かれている。作者 盛可以 の長編初邦訳とのことで、これからもとても楽しみな作家だ。