読谷文の本棚

読んで心に残った本の感想を綴ります。

『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈|成瀬あかりが帰ってきた!

成瀬は信じた道をいく 作者:宮島未奈 新潮社 Amazon 『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈 著新潮社初版年月日 2024年1月24日 成瀬にまた会えてうれしい。前作『成瀬は天下を取りにいく』に続き、第二作目の今作も主人公成瀬あかりの周囲の人々の視点で、成瀬の…

『夜明けを待つ』佐々涼子|生と死を見つめ続けた作家の珠玉のエッセイ集

夜明けを待つ(集英社インターナショナル) 作者:佐々涼子 集英社 Amazon 『夜明けを待つ』佐々涼子 著集英社インターナショナル初版年月日 2023年11月24日 「珠玉」とは、まさにこのエッセイ集のためにある言葉だ、と思った。 本書はノンフィクションライタ…

『八ヶ岳南麓から』上野千鶴子|先輩の、山暮らし愛

八ヶ岳南麓から 作者:上野 千鶴子 山と溪谷社 Amazon 『八ヶ岳南麓から』上野千鶴子 著山と溪谷社初版年月日 2023年11月21日 上野千鶴子さんの、20年以上にわたる東京と八ヶ岳の二拠点生活を綴ったエッセイ。上野さんが私生活を書かれた本は、おそらく本書が…

『一旦、退社。~50歳からの独立日記 』堀井美香|ジェーン・スーさんへのラブレター

一旦、退社。~50歳からの独立日記 作者:堀井美香 大和書房 Amazon 『一旦、退社。~50歳からの独立日記』堀井美香 著大和書房初版年月日 2023年2月16日 朝はラジオが流れている家庭で育った。チャンネルはTBSラジオ。 現在も放送されている朝の帯番組「森本…

『精神の生活』クリスティン・スモールウッド/佐藤直子訳|終わりをめぐる物語

精神の生活 作者:クリスティン・スモールウッド 書肆侃侃房 Amazon 『精神の生活』クリスティン・スモールウッド 著佐藤直子 訳書肆侃侃房初版年月日 2023年8月4日 これまでになかった、“はじめて「流産」をテーマにした小説”という触れ込みに惹かれて本書を…

『ネアンデルタール』レベッカ・ウラッグ・サイクス/野中香方子 訳|眼前に広がるネアンデルタール人の豊かな世界

ネアンデルタール (単行本) 作者:レベッカ・ウラッグ・サイクス 筑摩書房 Amazon 『ネアンデルタール』レベッカ・ウラッグ・サイクス 著 野中香方子 訳筑摩書房初版年月日 2022年10月11日 原題「KINDRED:NEANDERTHAL LIFE,LOVE,DEATH AND ART」「親戚:ネアン…

『くもをさがす』西加奈子|西さんが投げたもの

くもをさがす 作者:西加奈子 河出書房新社 Amazon 『くもをさがす』西加奈子 著河出書房新社初版年月日 2023年4月18日 途中で止めることができずに、夢中で読み続けた。リビングで、就寝前のベッドの中で、料理や散歩をしながらSiriに読み上げてもらって、読…

『遠い家族 母はなぜ無理心中を図ったのか』前田勝|母を探す、三つの国への旅

遠い家族―母はなぜ無理心中を図ったのか― 作者:前田勝 新潮社 Amazon 『遠い家族 母はなぜ無理心中を図ったのか』前田勝 著新潮社初版年月日 2023年3月29日 韓国人の母と台湾人の父の間に生まれ、日本人の義父の養子になって日本で暮らしていた著者は、大学…

『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈|膳所(ぜぜ)から世界へ!ニュー・ヒロイン、滋賀に現る

成瀬は天下を取りにいく 作者:宮島未奈 新潮社 Amazon 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈 著新潮社初版年月日 2023年3月17日 終始、眩しくて仕方なかった。清々しいまでの溢れる滋賀愛、そして、なんてことない日々だからこその青春の日常が。あった、あっ…

我々は今伝説を目の当たりにしている-大谷翔平と栗山英樹監督

WBC決勝戦 アメリカを下して日本優勝。最終回、3-2の9回にDHを解除して大谷翔平が救援登板。最後は同僚のトラウトを空振り三振に抑えて、試合終了。 なんじゃこのドラマは。 そして栗山英樹監督の気持ちを考えると、いてもたってもいられなくなる。 「高校卒…

『じゃむパンの日』赤染晶子|笑いと哀愁の不思議ワールド

じゃむパンの日 作者:赤染晶子 palmbooks Amazon 『じゃむパンの日』赤染晶子palmbooks初版年月日2022年12月1日 本書によると、著者赤染晶子さんは、綿谷りささんと金原ひとみさんが芥川賞を受賞した2004年に文學界新人賞を受賞してデビューし、2010年に『乙…

『赤い魚の夫婦』グアダルーペ・ネッテル/宇野和美 訳|そこにある不穏を炙りだす

赤い魚の夫婦 作者:グアダルーペ・ネッテル 現代書館 Amazon 『赤い魚の夫婦』グアダルーペ・ネッテル/宇野和美 訳現代書館初版年月日2021年8月20日 こちらの本は、1973年生まれのメキシコの作家グアダルーペ・ネッテルによる短編集で、『赤い魚の夫婦』『ゴ…

『ある行旅死亡人の物語』武田 惇志・伊藤 亜衣

ある行旅死亡人の物語 作者:武田 惇志,伊藤 亜衣 毎日新聞出版(インプレス) Amazon 毎日新聞出版初版年月日 2022年11月29日 内容紹介 ——— はじまりは、たった数行の死亡記事だった。警察も探偵もたどり着けなかった真実へ――。 「名もなき人」の半生を追っ…

『母という呪縛 娘という牢獄』齊藤 彩

母という呪縛 娘という牢獄 作者:齊藤彩 講談社 Amazon 講談社初版年月日 2022年12月14日 2018年、母親による娘への長期間わたる苛烈な教育虐待の果てに起きた、娘による母親殺害事件。本書は加害者である娘への取材をまとめた手記である。 中学受験にはじま…

『子宮』盛可以/河村昌子訳

子宮 作者:盛 可以 河出書房新社 Amazon 河出書房新社初版年月日 2022年10月26日 先日(2023年1月31日)締め切られた、第9回日本翻訳大賞の読者推薦に推薦しました。 ——— 1960〜70年代に中国南部の農村に生まれた初家の五人姉妹を軸に、清朝生まれの纏足の祖母…